館山市いじめ防止基本方針
館山市いじめ防止基本方針
平成27年11月
館山市
館山市教育委員会
はじめに
いじめは,いじめを受けた児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し,心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるだけでなく,生命や身体に重大な危険を生じさせるおそれがある。
いじめの問題は,どの児童生徒・どの学校でも起こりうることであり,その防止・早期発見・対処のためには,すべての児童生徒を対象とした観点で取り組むことが重要である。
本市は,市民本位の「ふるさと館山」のまちづくりを進めている。この「まちづくり」のためには,市民一人ひとりが日々の生活の中で生きがいを感じる「元気な市民」であることが大切である。
このことを踏まえ,児童生徒の一人ひとりの人権を尊重し,学校・家庭・地域・関係機関との連携の下,市をあげて,いじめ問題に取り組むとともに,いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)及び館山市いじめ防止対策推進条例(平成27年条例第11号)に基づき,いじめ対策を総合的かつ効果的に推進するために“館山市いじめ防止基本方針”を策定する。
第1 いじめ防止等のための対策の基本的な方向に関する事項
1 いじめとは
いじめの定義(法第2条)
「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」
このことから,個々の行為がいじめに当たるか否かは,いじめられた児童生徒の立場に立つことが必要である。児童生徒によっては,いじめられていることを相談しにくい気持ちや,気づいてほしいという思いがあることを受け止め,児童生徒の表情や様子をきめ細かく観察することが大切である。いじめの認知は,特定の教職員ではなく,法第22条「学校におけるいじめの防止等の対策のための組織」を活用することとする。
2 いじめ防止等に関する基本的な考え方
(1) いじめの防止
いじめは,どの児童生徒にも起こりうる。
このことを踏まえ,いじめ問題の根本的な克服のためには,児童生徒が自己存在感や充実感を感じる学校づくりが必要である。「いじめは決して許されない人権侵害であり,犯罪につながる恐れがある。」ということを理解させるとともに,児童生徒の豊かな情操や道徳心,よりよい人間関係を構築する能力を養う必要がある。これらに加えて,市と学校は,家庭・地域と連携を深め,すべての市民がいじめを許さない心を育むとともに,いじめ問題について啓発普及活動に努める必要がある。
(2) いじめの早期発見
いじめの早期発見は,いじめに対し,迅速に対処するための前提である。このためには,教職員や保護者が児童生徒の些細な変化に気づく力を持つことや,信頼関係の構築が必要である。
いじめは,大人に見えにくい場所や時間に行われたり,遊びやふざけあいを装って行われることがある。些細な兆候であっても疑いを持って早い段階から的確に関わり,積極的にいじめを認知する必要がある。
また,早期発見のための定期的なアンケート調査・心理テスト(ハイパーQU)・教育相談の実施,館山市いじめ相談室の周知など,児童生徒がいじめを訴えやすい体制を整えるとともに,家庭・地域と連携して児童生徒を見守ることが必要である。
(3) いじめへの対処
いじめがあることが確認された場合又はいじめが疑われる場合は,学校は直ちにいじめを受けた児童生徒や知らせてきた児童生徒の安全を確保し,いじめたとされる児童生徒に事情を確認の上で適切な指導をするなど組織的な対応が必要である。
このため,学校は日ごろからいじめを把握した場合の対処について理解を深め,教職員が一人で抱え込むことのないよう組織的な対応ができる体制を整備しておく必要がある。
(4) 地域や家庭との連携
社会全体で児童生徒を見守り,健やかな成長を促すためには,学校・家庭・地域の連携が必要である。より多くの大人が児童生徒と向き合い,悩みや相談を受け止められるよう,学校・家庭・地域が組織的に連携協働できる体制を構築する。
(5)関係機関との連携
いじめ問題への対応は,事案に応じて警察や児童相談所等関係機関との適切な連携が必要になる。このため市は関係機関との情報の共有や連携の体制づくりを構築していく必要がある。
※ 館山市いじめ問題対策連絡協議会の設置
第2 いじめの防止等のために館山市が実施すべき施策
1 組織の設置
市は,いじめの防止等に関係する関係機関と,いじめ問題に対して連携した情報共有や実効的な対策等の検討を行うため「館山市いじめ問題対策連絡協議会」(以下「連絡協議会」という。)を設置する。
連絡協議会の委員は,学校,館山市教育委員会,館山市,児童相談所,法務局,警察,館山市PTA連絡協議会その他の関係者とする。
<連絡協議会の所掌事項>
・いじめ問題に関する施策の推進に関すること。
・市内学校のいじめ問題の現状把握,分析,対処に関すること。
・関係機関における情報交換・連絡調整・相互連携・協力に関すること。
・その他,連絡協議会設置の目的を達成するために必要な事項に関すること。
2 館山市が実施すべき施策
(1) いじめの防止
- 豊かな心の育成 -
児童生徒の豊かな情操と道徳心を培い,心の通う人間関係を構築する能力を養うことが,いじめの防止に資するものであり,すべての教育活動を通じて道徳教育や体験活動の充実を図る。
- 教職員の資質向上 -
教職員が,いじめの問題に対して様々な事案に適切に対処できるよう,必要な研修の実施やカウンセリング能力等の向上のための研修を推進する。
- ハイパーQUの実施 -
児童生徒の学級での様子や交友関係,人間関係を知る手がかりとして,ハイパーQUを年2回実施する。その結果を分析し,学級経営の在り方や児童生徒のよりよい人間関係づくりに役立てることとする。
- 調査研究の実施 -
学校におけるいじめの状況やいじめ問題に対する日常の取組等について調査する。また,いじめの防止及び早期発見のための方策,いじめが起こる原因や背景,いじめを許さない学級づくりや学校づくりについて調査研究し,その成果を普及する。
- 中学校区生徒指導会議の開催 -
いじめ問題等について,小中学校の連携を深めるとともに,定期的に中学校区の生徒指導会議を開催し,必要に応じて適切な対応・対処について情報交換・連携を図る。
- 啓発活動の推進 -
いじめ(インターネットを通じてのいじめを含む。)が児童生徒に及ぼす影響,いじめを防止することの重要性,いじめに係る相談等について必要な広報や啓発活動を推進する。
(2) いじめの早期発見
- いじめ相談室の設置 -
児童生徒がいじめに関わる事案を学校や家庭で相談できない場合に対応できるように,「館山市いじめ相談室」を設置するとともに保護者を含め広く市民に周知する。
- 定期的な実態把握 -
定期的なアンケート調査や聞き取り調査,教育相談を実施することにより,いじめの実態を把握するとともに早期発見に努める。
- 家庭・地域との連携 -
家庭で児童生徒の様子に変化が見られた時,些細なことでもいじめの疑いを持って学校に相談できるように保護者との連携を図る。
PTAや青少年相談員,子ども会,スポーツ少年団等関係団体との連携を深め,児童生徒の悩みや相談を受け止められる体制の充実を図る。
(3) いじめへの対処
- 問題解決に向けた支援 -
市は,いじめについて学校から報告を受けたときは,必要に応じて当該学校に対して指導・助言を行う。
また,解決が困難な場合は,連絡協議会を開催するなど,いじめ解消に向けて関係機関と連携して早期解消を図る。
- インターネットを利用したいじめへの対応 -
近年,インターネットの普及にともない,些細なことからネットいじめが増加している。児童生徒が情報モラルを身に付けるための指導の充実を図るとともに,保護者に対しても,インターネットの利用のルールやマナーに関する情報提供や啓発活動を推進していく。
また,千葉県環境生活部県民生活・文化課、子ども・若者育成支援室のネットパトロールを活用し,インターネットを通じてのいじめに対処する。
- 学校間の連携を図る -
いじめを受けた児童生徒といじめを行った児童生徒が同じ学校でない場合であっても,いじめを受けた児童生徒とその保護者への支援及びいじめを行った児童生徒への指導とその保護者への助言が適切に行われるように学校間の連携を図る。
第3 いじめの防止等のために学校が実施すべき施策
学校は,いじめの防止等のため,学校いじめ防止基本方針に基づき,いじめの防止等の対策のための組織を中心に,校長のリーダーシップの下,一致協力体制を確立し,学校の実情に応じた対策を推進する。
1 学校いじめ防止基本方針の策定
< 学校いじめ防止基本方針(法第13条) >
「学校は,いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し,その学校の実情に応じ,
当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めるものとする。」
学校は,いじめの防止等についての基本的な方向や取組の内容等を「学校いじめ防止基本方針」(以下「学校基本方針」という。)として定めるものとし,策定した学校基本方針については,学校のホームページ等で公表する。
2 学校におけるいじめの防止等の対策のための組織
(2) 学校におけるいじめの防止等の対策のための組織(法第22条)
「学校は,当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため,当該学校の複数の教職員,心理,福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。」
いじめ防止対策の組織は,いじめの防止等の中核となる組織として,いじめの疑いに関する情報を的確に共有でき,共有された情報を基に,組織的に対応できる体制とする。
特に,いじめであるかどうかの判断は組織的に行うことが必要である。教職員は,些細な兆候や懸念,児童生徒からの訴えを抱え込まず,すべて当該組織に報告・相談する。当該組織は集められた情報を記録し,複数の教職員が個別に認知した情報の集約と共有化を図る。
また,当該組織は自校の学校基本方針の見直しや,取組が計画どおり進んでいるかの確認,いじめへの対処,必要に応じた計画の見直しなど,自校のいじめ防止等の取組についてPDCAサイクルで検証する。
3 学校におけるいじめ防止等に関する措置
市及び学校は,連携を密にしていじめの防止や早期発見,いじめが発生した場合の対処に当たる。
(1) いじめの防止
いじめはどの児童生徒にも起こりうることを踏まえ,児童生徒がいじめに向かうことのないよう未然防止に取り組む。未然防止の基本として,学校は,心の通じ合うコミュニケーション能力を育み,規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加・活躍できるような授業づくりや集団づくりを行うことが大切である。加えて,集団の一員としての自覚や自信を身につけ,お互いを認め合える人間関係・学校風土をつくるように努める。
また,児童会・生徒会において,いじめ撲滅や命の大切さを呼びかける活動,児童生徒同士での話し合いの場を設けるなど,いじめを防止するための取組を推進する。
(2) 早期発見
いじめは,大人が気づきにくく判断しにくい形で行われることを認識し,児童生徒との信頼関係の構築に努め,児童生徒が示す些細な変化を見逃さないように見守る必要がある。
また,定期的なアンケートやハイパーQUによる調査,教育相談等を実施し,いじめの実態の把握に努める。
(3) いじめに対する措置
いじめの発見・通報を受けた場合は,特定の教職員で抱え込まず,速やかにいじめ防止のための校内組織に報告する。
いじめを受けた児童生徒・通報してきた児童生徒を守るとともに,組織的に対応し,いじめを行った児童生徒には,人格の成長を旨とした教育的配慮の下,毅然とした態度で指導する。
これらの対応については,全教職員の共通理解,保護者の協力,関係機関・専門機関との連携の下に取り組む。
(4) 集団への働きかけ
いじめについて,被害者の保護や加害者への指導のみならず,いじめを傍観していた児童生徒に対しても自分の問題として捉えさせ,いじめを止められなくても誰かに知らせる勇気を持つように指導する。
また,同調していた児童生徒には,そのことは,いじめに加担していることであることを理解させる。
(5) 継続的な指導
いじめが解消したとみられる場合でも,引き続き観察を行い,心のケアや指導を継続的に行う。
また,いじめの検証を行い,再発防止に向け,日常的な取組やいじめを許さない学校づくりを計画的に推進する。この際,いじめ防止には,児童・生徒がお互いを理解し,よりよい人間関係を構築することが基本であることを踏まえて指導する。
(6) インターネットや携帯電話を利用したいじめへの対応
インターネットを通じてのいじめに対して効果的に対処できるように,児童生徒や保護者にフィルタリングや情報モラルについての指導・啓発活動に努める。
第4 重大事態への対処
1 重大事態とは
学校の設置者又はその設置する学校による対処(法第28条)
「1 学校の設置者又はその設置する学校は,次に掲げる場合には,その事態(以下「重大事態」という。)
に対処し,及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため,速やかに,当該学校の設置
者又はその設置する学校の下に組織を設け,質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態
に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
(1) いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命,心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがある
と認めるとき。
(2) いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑
いがあると認めるとき。
2 学校の設置者又はその設置する学校は,前項の規定による調査を行ったときは,当該調査に係るいじ
めを受けた児童等及びその保護者に対し,当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情
報を適切に提供するものとする。
3 第1項の規定により学校が調査を行う場合においては,当該学校の設置者は,同項の規定による調査
及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び支援を行うものとする。」
第1項第1号の「生命,心身又は財産に重大な被害」とは,児童生徒が自殺を企図した場合,身体に重大な傷害を負った場合,金品等の重大な被害を被った場合,精神性の疾患を発症した場合をいう。
第1項第2号の「相当の期間」については,不登校の定義を踏まえ,30日を目安とする。ただし,上記の目安にかかわらず,館山市教育委員会(以下「市教委」という。)又は学校の判断により,迅速に調査に着手することが必要である。また,児童生徒や保護者から,いじめにより重大事態に至ったという申立
てがあったときは,重大事態が発生したものとして報告・調査に当たる。
2 重大事態の報告及び調査
学校は,重大事態が発生した場合,市教委を通じて速やかに市長に報告する。
調査は,重大事態に対処するとともに,今後のいじめ事案に対処するために行うものでもある。事実を明確にするために,重大事態に至る要因となったいじめ行為が,いつ(いつ頃から),誰から行われ,どのような態様であったか,いじめを生んだ背景事情や児童生徒の人間関係を可能な限り網羅的に明確にすることが必要である。この際,因果関係の特定は急ぐべきではなく,客観的な事実関係を速やかに調査すべきである。
3 調査を行う組織について
重大事態の調査については,学校又は市教委のどちらが主体となって行うかについては,従前の経緯や事案の特性,いじめを受けた児童生徒や保護者の訴えを踏まえて市教委が判断する。 学校が主体となる場合は,校内に設置している「いじめの防止等の対策のための組織」を母体として速やかにその組織を設置する。
また,市教委が主体となる場合は,連絡協議会の協力を得ながら調査を行う等の方法により調査を行う。
4 調査結果の提供及び報告
調査を実施した場合,学校又は市教委は,いじめを受けた児童生徒や保護者に対して,事実関係等その他の必要な情報について,経過報告を含め,適時・適切に提供する。
また,調査結果については,速やかに市長に報告する。なお,いじめを受けた児童生徒又はその保護者が希望する場合は,いじめを受けた児童生徒又はその保護者の所見を調査結果の報告に添えて提出する。
調査結果の報告に伴い,学校及び市教委は,その内容を重んじて主体的に再発防止に取り組まなくてはならない。
5 再調査及び措置
(1) 再調査(法第30条第2項)
当該報告に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは,附属機関を設けて調査を行う等の方法により,第二十八条第一項の規定による調査の結果について調査を行うことができる。
市長は,必要があると認めるときは,市長が設置する附属機関(名称:館山市いじめ調査委員会)により再調査を行うことができる。
(2) 情報提供
再調査についても,市長は,いじめを受けた児童生徒及びその保護者に対して,適時・適切な方法で調査の進捗状況等及び調査結果について情報提供する。
(3) 再調査を踏まえた措置
市長及び市教委は,再調査の結果を踏まえ,自らの権限及び責任において,当該調査に係る重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生防止のために必要な措置を講ずる。
(4) 議会への報告
再調査を行った場合は,市長は,その結果について必要な配慮を確保し,議会に報告する。
第5 その他
市は,国や県の動向を踏まえ,必要があると認められたときは,本基本方針を見直すとともに必要な措置を講ずる。